阿弖流為 アテルイ
この東北の地に、蝦夷と蔑まれながらも誇り高く生きた人々がいました。阿弖流為(アテルイ)を長とする一族です。同じ東北に生まれ暮らしている僕は、本を読み、アテルイの生き様に感動し、関わる史跡を訪ね歩きました。達谷窟毘沙門堂や胆沢城跡、奥州市埋蔵文化センターなどに足を運びました。この辺りには、名勝猊鼻渓と厳美渓もあります。とっても風光明媚な土地です。アテルイやその仲間たちもこの景色を目にしたのだろう、ここでも戦いが繰り広げられたのだろうか…、2000年ほど前のこの地をめぐる激烈な物語に思いを馳せました。
火怨 高橋克彦著 (講談社文庫)
歴史は勝者の視点から記述されると言われます。
朝廷との戦いに敗れたアテルイは逆賊、悪党として記録されているようです。勝者の視点からの歴史としてみると、敗れたアテルイはそのように記録されてしまうのでしょう。でも、本当の姿は、どうだったのだろうか?単に戦いの才能に長けているだけで、一族をまとめる長として広い東北を治める事が出来ただろうか。アテルイは、知略に優れ、武に通じ、人々を思う慈悲深さもあったに違いない。人間的な魅力のある人物だったからこそ、東北はまとまり戦うことができたのだと思う。東北に生きる僕は、そう思いたい。
「火怨」高橋克彦著(講談社文庫)は、語られなかったアテルイの側からの記録のように読みました。この物語に出会えたのが有難いです。本を読み、深く心を打たれ東北に生まれたことに誇りを持てるようになりました。歴史の記録からは削除された東北の深く素晴らしい歴史が、僕の住むこの東北の地にはある…、そう思わせてくれる本です。アテルイは東北に生きる人々にとって希望であり勇者であり本当の長だったに違いない。東北には、阿弖流為のような気質をもつ人々が多くいて、その気質を受け入れ育てられる土壌と雰囲気があり、みんなが勇者としての資質を持っていたのだろう。だからこそアテルイのような傑物が現れるのだ。そう思いたい。
阿弖流為の活躍する舞台は、後に奥州藤原氏の繁栄の地となり、さらに大谷翔平が生まれ育つ土地となります。妄想が過ぎる僕は、アテルイと仲間の勇者たちの誇り高き生き様の系譜はずっとこの地に根付いていて、安倍貞任から藤原氏へと引き継がれたように思うのです。そしてその系譜は、2000年の時を経て今、世界一の野球の舞台で世界一の選手として大活躍する大谷翔平へとバトンは渡された。大谷翔平は、野球への情熱はもちろん、人間としての優しさや礼儀正しさなど誇り高き生き方を、アテルイや安倍貞任や藤原氏やその仲間たちがきっとそうだっただろう凛とした姿を示してくれているのではないか、とまで想像してしまいます。確かめるすべは、ありませんが、「東北の地にずっと根付いてきたものだろう」と浪漫チックな妄想をしてしまうのです。
今日も、読んでいただきありがとうございます。良い1日になりますように。