学生時代、幾度となく卒業式などの節目の場で言われた言葉です。「どういうこと?」という疑問とともに覚えています。学生時代のいわゆる式典の話を僕は聞いていません。聞くふりをしていますが、全く別のことを考えています。意味も熱量もない言葉の羅列で、心に響くことはついぞなかったと思います。「こんなくだらない話を誰が有難がって聞くのだろう?」と怒りすら感じたこともあったように思います。
「これからの時代は、君たちが主役なのです。」
主役って?僕のイメージする主役とは、メインストーリーに関わり、ステージの上で華々しく演じる役者です。時代の主役であれば、織田信長や豊臣秀吉など、戦国時代の武将たちをイメージします。彼らは、確かに時代の主役だったように思います。時代をつくるためにそれぞれが、それぞれの旗印のもとで自分の義を貫き、戦い生きた。
主役って何?
今は、誰が主役なのだろう?大人たち?そうは見えない。総理大臣?果たして主役だろうか。主役って何?みんなが主役ってありえないでしょうに。どういうこと?
詳しい解説などないまま、大抵は、こう続きます。
「君たちが、この社会を作り上げるのです。この学び舎で学んだこと、友とともに過ごした日々を糧に〜。」
社会を作るって?先生方は作ってきたのだろうか?
小中高大学と、何かの節目でよく聞いた言葉でした。その度に、「あぁ、また来た。」という思いとともに、納得できるような内容が話されるわけでもありませんでした。納得がいかないために、妙に覚えていた言葉です。また、おかしなことに上っ面の気持ちの入っていない話だったような印象すらあるので、逆に不愉快さとともに覚えていたのでしょう。
世の中を維持することも大事な仕事
半世紀そんな言葉がどこか胸の奥の方に引っかかりながら、一生懸命に仕事をし、同じように仕事をする同僚や世の中の人々を見て、主役の意味がだんだんと分かってきたように思います。
人類は、狩猟生活から社会生活を営むことを選択してきました。その社会に住む人間が生命を維持し、生きていくには大きなエネルギーが必要です。多少なりとも世界の情勢を比較することで世の中の仕組みや世界の人々のあり方がぼんやりと見えてきました。日本人の誇るべき民度は、日本社会が長年にわたって継承し、何世代も通して伝え、築き上げてきたものだと実感しています。
人間は、容易な方向に流れやすい。価値観も、崩れやすい。人々の生活と社会の仕組みの維持は、非常にエネルギーが必要なことです。文化の維持は予想以上に難しい。維持できなかった実例が、歴史上、諸外国には見られる。
社会をつくるということは、社会を維持するということ。
つまり、「時代の主人公」ということは、生きている時代にあうように、社会の仕組みを変えながら維持ていくこと。
僕たちの世代は、半世紀の間、正規雇用、非正規雇用に関わらす、この日本社会を維持し、発展するのに貢献してきたのです。良い社会を次の世代に続けるため、良くするために仕事をしてきたのです。そう思えるようになりました。
恥ずかしながら恩師たちの言葉が、やっと理解し納得できたのでした。僕たちのこの社会を維持することにも大きな意義がある。一人一人が日本人として継続し、継承していく。それで世の中は発展していく。「それを言いたいんだよ。校長先生方は。」若者に伝えたいと思います。
読んでいただきありがとうございます。良い1日になりますように。